2010年12月6日月曜日

「社長失格」を読んで

社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由

社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由

ネットでホリエモンと板倉さんの対談みて、興味を持って購入した。TAとして参加した学部生向けの実習の合宿中に持ち込んで一気に読破したもの。対談のなかでも結構話題に上がっていたけど、登場人物の顔ぶれがすごい。ビルゲイツ・西和彦さん・孫正義さん・楽天銀行頭取の国重さんiモードの立役者夏野さんなど、とくかくその後活躍するすごいメンツが登場する。

ハイパーネットはITベンチャーの先駆けのような存在で、ホリエモンさんも板倉さんの「こりないくんの日記」をいつも読んでいたらしいし、サイバーエージェントの藤田さんもアルバイトとしてハイパーネットを訪れる、などいろんなところでいろんなつながりがあるようだ。(渋谷ではたらく社長の告白 (幻冬舎文庫))より。最近では電子書籍ブームに乗っかり、電子書籍での販売も決まったらしい。さすがの名著。第1次ネットバブル1997年から2001年や第2次ネットバブルが2003年から2005年ぐらい。会社が問倒産したのが1997年だから、時代の波からしたら、少し早すぎたのかもしれない。

 ハイパーネットのビジネスモデル、「世界初のインターネットを利用した広告ネットワークシステムであり、利用者は登録時にプロフィールを入力、その属性によってセグメントした広告をユーザーのパソコンに送り込む。利用者は無料でインターネットを利用でき、広告主はターゲットに的確に広告を打つことができる。広告効果も測定できる」というものだ。当時に先進的で見事なアイデアだったそうである。
昔のアカデミーヒルズの要約版も参考になる。
こちら→http://www.academyhills.com/aboutus/gijiroku/24/24_18.html

印象に残った部分は以下の通り。


■やはり一企業である「銀行のなかの銀行員」だった国重氏
『ぼくは、勘違いしていた。国重さんは親しい仕事相手ではあったが、「友達」ではなかった。いざとなれば、国重さんとうう個人から住友銀行取締役という「企業人」にチャンネルが変わるのだ。個人の感情と企業の論理。どこでどう線を引くのかは分かっていたかった。「組織」というものに対する本質的な理解がなかったのだ』

ベンチャーキャピタルの最王手であるJAFCOからの出資を受けて見事なまでに成長の一歩をたどっていたが、そのご住友銀行から融資を断られたことが大きな原因となり資金繰りが悪化することとなったのだ。詳しいことは僕には良くわからないが、VCや銀行とのバランスのとれた付き合い方が大切なのだろう。実際に当時は、BIS規制なども相まって銀行自体も厳しい局面を迎えていたのも大きな原因だそうだ。

■「僕は信頼されていないんじゃないか」といって去っていった副社長の夏野氏
『社員達のなんお目配りもできていない。ぼくはその事実に気づいた。この四か月、ぼくは目先の資金繰りと業績ばかりを気にしていた。役員達との仕事上の付き合いはあったが、彼らが何を考えているのかまでは気が回らなかった。』
『後日夏野氏が吐いたその言葉にはそれが現れていた。配慮が足りなかった。実際には、僕は彼を大いに頼りにしていたのにもかかわらずそう思われていたのである。』

東京ガス出身でMBAホルダーの夏野氏を含め、スペシャリスト達をうまくマネジメントできなかったことがひとつの失敗の大きな原因といえる。ホリエモンとの対談のなかでは、「夏野氏は、一流のレストランでは実力を発揮できるシェフだったが、手持ちの素材でいい家庭料理が作れるシェフではなかった」と語っている。

■「僕のほうからお会いしたかった」と言って現れた孫正義
『「ぼくの方からお会いしたいと思っていました」、やられた。ベンチャービジネスの世界では知らぬ人がいないといわれる有名経営者。孫正義氏が経営危機に陥ったときに若造経営者の僕にお会いしたかったと頭を下げる。なかなかできることではない。』

成功者孫正義の交渉の姿勢がよくわかる。いまさらなが、さすがと思う。その後のソフトバンクは、日本テレコムの買収、ボーダファンの買収を得て見事なまでの経営基盤を築くことに。

■裁判所による破産宣告からの帰宅の電車で
『ぼくはますます憂鬱になって、空いた席に座った。向かいの席に、若い女性が一人座っていた。黒のストッキングに包まれた脚を奇麗にそろえ、青山ブックセンターのカバーのかかった本を読んでいた。栗色の長い髪とはっきりした眉と二重の大きな瞳のせいで白い顔が白く見えた。灰色のニットのワンピースの上に薄手のコートを羽織っていた。ぼくの好みだった。~しばらく彼女を眺めていた。先ほどまで頭のなかを占めていたここ数年間の出来事がいつのまにか蒸発したように体から抜けていた。なにかが沸き上がってきた。あんな女性を手に入れられるような自信が欲しい。無一文のぼくのなかにある一種のの感情が芽生えてきた。もう一度はじめよう。とにかく前に進もう。』

このシーンは、若手企業経営者に好まれているシーンだそうだ。もう一度やってやるぞ!というモチベーションが高められるシーンかもしれない。

【まとめ】
会社がつぶれた理由は読んでいると、いろいろある気がするけど大きく二つに分けて、①金融機関との付き合い方を間違えたこと、②人材のマネジメントに失敗した、ことであると感じた。板倉氏本人もベンチャーやる人はぜひ読むべきだといっていたけど確かに読む価値は大。
米国のビジネススクールでは、倒産した会社の経営者を招いて失敗の原因をレビューする講義があるそうだ。失敗とは前に前進し、建設的な議論を生み出すためのステージという位置づけだそうだ。何でも失敗をすると、蓋をしてみないようにしたがるけど、そうれはそうじゃなくて成功への布石なのだと考えるべきなのだ。この本を読んでからってわけじゃないけど、最近そんなことを思う。

PS:あと倒産後板倉さんはファイナンスセミナーなんかをやっているそうですが、その板倉雄一郎事務所のパートナーでいらっしゃる石野さんの本も結構わかりやすいので、こちらも注目。
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道具としてのファイナンス

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