2011年3月3日木曜日

「イシューからはじめよ」を読んで

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
安宅和人氏の帯に書いてある通り「研究者×戦略コンサル×マーケター」と書かれており幅広いキャリアを歩んできたことが分かる。特にすごいのがサラリーマンを一回やめて海外の大学でPhDを取得したというところ。普通の人間はそんなパワーはない。研究活動でひたすら知を追求した結果としてこのような本が書けるのかもしれない。三谷宏治さんの本に少し近いものは感じた。こっちの方がもっと深く踏み込んでいる。印象に残った部分の要約抜粋を以下にレビュー。

■悩まない・悩んでいる暇があれば考える
・悩むとは「答えのでない問題」という前提にたっており、いくらやっても徒労感しか残らない。特に仕事において悩むというのはばかげた話である。
・仕事とは何かを生み出すためにあるものであり、変化を生まないと分かっている活動に時間を使うのは無駄以外何物でもない。
・悩んでいると感じたら一度止めたほうが良い。「悩んでいる自分を察知できるようになろう」とよく言っている。研究・ビジネスですべきことは、あくまで「答えが出る」という前提にたっていなければならない。


悩むことは何の生産性もない時間である。考えなければ意味がない。最近は僕もそれを胸に刻んで生活するようにしている。

■何はともあれ「言葉」にする
・イシューが見えてそれに対する仮説をたてたら次にそれを言葉に落とす。「これがイシューかな?」・「ここが見極めどころかな?」と思ったらすぐにそれを言葉にして表現することが大切である。なぜか?それはイシューを言葉で表現することではじめて「自分がそのイシューをどのようにとらえているのか」・「何と何についての分岐点をはっきりさせようとしているのか?」が明確になるからである。
・言葉にすることで、「最終的に何を言わんとしているのか」をどれだけ落とし込めているかがわかる。僕が「言葉にすることを徹底しよう」・「言葉に落とすことに病的なまでにこだわろう」いうと驚く人が多い。図や表ではなく言葉でしか概念は伝わらない。


僕もまがいなりに大学院で研究活動を行ってきた存在としてこの感覚はすごく良く分かる。がんばって分析にかけた過程や分析を行う本質的な意味を言葉にして説明できなければまったく意味がないのだ。「言葉で説明できなければほんとに理解できたとは言えない」とはよく言ったものでその通りだと思う。

■一次情報にあたる
誰のフィルターにもかかっていない生の情報にあたること。モノづくりならば、生産ライン・調達の現場に立つこと。販売ならば現場に出向くこと。店頭にたってお客様の声を聞くこと。研究の場合、そのテーマを研究している人の話を聞くその手法を開発した人の話を聞くこと、データの場合
加工されていないデータにあたり、変化にパターンや特徴を見て理解することである。
・現場で何が起こっているのかを見て感じない限り理解できないことは多い。一件関係のないものが現場では隣り合わせで連動しえいるといったことはよくあるが、これは現場に出向かないと分からない。


現場にあたること、その道のプロに直接質問すること、ユーザーの生の声を聞くことなど誰のフィルターのも掛けられていない情報に直接あたることの重要性を述べている。この点は僕も大学院での研究生活ですごく共感できた。ライフネット生命副社長の岩瀬大輔さんもある本で全く同じことを述べており,考えに考え抜いた結果ふっと現場に行ってみるとすぐに腑に落ちることがあるそうだ。

■「Sowhat?」を繰り返す
仮説的な質問を繰り返すことの重要性が述べられている。何度も自分に対してあるいはチーム内で質問を繰り返すことで仮設がどんどん具体的になり、検証すべきイシューが磨かれていく。


大学院で研究活動を行うなかでやはり僕もこのフレーズを頭に反芻させることがあった。どうしてもひとつのことをずっとやっていると井の中の蛙の議論になりやすい。そもそもそれって意味あるの?社会手金いどんなすばらしいことがあんの?って突き詰めていくことはとても大切。

■おわりに
・毎日の仕事・研究のなかで「この作業って意味があるのか?」・「それは本当にイシューなのか?」と問いかけることからはじめるのだ。僕自身振り返ってみてもまさにこうゆう日々の活動の中で少しずつイシューに対する感覚を磨いてきた。
コンサルタントとして仕事を始めた頃「それって本当にイシュー何ですか?」と尋ねてチームの責任者から「それはとてもいい質問だね!」と言われたときの喜びは今でもよく覚えている。


毎日の生活のなかでイシューを追求する重要性を最後に語っている。議論を一歩前に進める質問・日々の生活の中でイシューを発見し,それを突き詰める姿勢は大切。

この本はかなり反響を読んでおりカリスマブロガーの書評も多数!
○内藤忍さんの書評:http://www.shinoby.net/2010/12/post-2287.html
○右往左往:東大院生のブログ:http://rightnleft.blog61.fc2.com/blog-entry-352.html
【まとめ&感想】
もともと筆者のことを知らなかったことからどんな本を書くのかと感じながら読んだ。かなりの重厚感が感じられた。脳神経科学のPhDまで取得しているせいか知的で論理的なことが分かる。「我が国では仕事の効率化などの小手先の議論ばかりされていて本質的な知的生産の議論が行われていない。」と述べて最後に問題提起をしている。非常に共感できる。
マネックスユニバーシティの内藤忍さんの書評ではこの本は口当たりは良いですが、深みもかなりあり、簡単に読み解ける本ではないと思います。何回も何回も読み込んで、その中から何かを見つけていくような本です。」と評しており単なる要約本ではなく,教科書のように噛み締めたい一冊かもしれない。
この言葉は筆者のキャリアを物語っている。小手先の仕事術本かもしれませんが筆者の在籍したいたマッキンゼー本
マッキンゼー式 世界最強の仕事術 (SB文庫)

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