2011年1月25日火曜日

「お金の流れが変わった」を読んで

お金の流れが変わった! (PHP新書)
お金の流れが変わった! (PHP新書)

大前研一さんの本。大前さんを知ったのは高校の時だった。理系出身の経営コンサルタントってことで「平成維新」とか「企業参謀」とかを立ち読みしたことがある。それが初めての出会いだろうか。大前さんは世界的に有名なコンサルタントだそうで、企業参謀とかは英訳されて全世界に読まれいたりしているらしい。一番すごいと思うのが発想力。そんなアイディアがあったのか?と思わずうなってしまう切り口やおもしろい提案が湧いてくる。おもしろかった。さすが大前さん!でも大前さんには「コンサルタントとしては超一流、経営者としてはニ流」なんていう人もいて評価は分かれたりもする。あくまですべてをうのみにするのではなく客観的な視点で読むことは大切だろう。

印象に残った部分は以下の通り。要約・抜粋と感想。

■ホームレスマネーで呼びこんだ
・今のアメリカのようなやり方で成功した国はほとんどない。フランスやイタリア、イギリスなども自民の民間企業を国営化してきたが、大半が失敗に終わった。
FRBのベンバーナンキガイドナー財務長官も「アメリカ経済は底を打った」、「新要回復の兆しが見られる」などと発言したのもやはりホームレスマネーをアメリカに呼び戻すためのフェイントだったと言える。

政治家の発言は経済を動かすというけど確かにバーナンキとかガイドナーは恣意的にやってるんだね。日本の閣僚や日銀にその力はない。

■日本の鉄道は世界売れる
・日本人は気づいていないかもしれないがJR東日本のビジネスモデルは海外で売れる。現時点で日本最強の会社だと考えるのがJR東日本。駅ビル型ショッピングセンターのルミネやアトレや電子マネーのスイカを連動させ、乗客をスイカ一枚で食事やショッピングさらにはバスやタクシーまで利用できるというシステムを作り上げた
・駅中から駅上まですべてが収益に結びつくという日本独自のビジネスモデルは「鉄道は儲からない」の世界常識を覆した。こうなるともはや鉄道事業というよりも、鉄道を含めた地域生活・コミニティ総合サービスである。
・日本の私鉄にも活目すべき点が多い。我が国の鉄道業界は最高の新興国モデルなのである。私鉄というのはディベロッパーであると同時に都市にスラムをつくらない、という優れた役割を持つ。世界中の大都市は押しなべてスラム化の悩みを抱えているがこれは膨大な人口が都心の狭い地域に集中してしまうこと。しかし、日本では郊外から乗り入れる私鉄が半径50キロメートルに分散させてくれた。
・この私鉄モデルはメキシコなど2000万人もの人間が狭い地域にひしめいているところはもちろん、都市部に数百万人の人口を抱える国ならどこでも興味を示すはずである。


日本に住んでると気づかないけどJRがやってるような一体型のサービスって世界では結構めずらしいのかもしれない。スイカで決済サービスを全統合できるところもすごい。JRみたいにもともと図体がでかくて国営で利権を抑えていたからできたのかもしれない。あと、日本って確かにスラム街ってないよね。私鉄のおかげなのかも。

■ワンセットで進出せよ
・鉄道モデルの輸出を考えるときに重要なのは各社レベルではなくワンセットで進出する。日本の鉄道のネックは技術が会社ごとに異なる点。運航技術はJR系、建設は鉄道運輸機構、車両は川崎製鉄、日立製鉄所といった具合に、別々の会社が独自に技術を開発し手掛けている。そのため海外に売り出すときも各社が別々に交渉に出向いてしまうため、パッケージとしての醍醐味は失われてしまう。
・ドイツのフランスにせよ、進出するならワンセットが常識である。今後は高速鉄道で急速に実力と実績をあげている中国が官民一体で世界市場に出てくるはずである。
そうなったら日本も鉄道輸出コンソーシアムのような組織をつくり、車両やオペレーション、ファイナンスまでを含むすべてを一手に引き受ける体制を構築しないと勝てない。
Eコマースを行うためには、携帯会社に協力を仰ぐなどあらゆる企業がその体制に協力する仕組みを整える。携帯一つで鉄道だけじゃなく駅ビルでどこでも買い物ができる。

鉄道を輸出するための戦略、手立てが綴られている。大前さんの発想力が感じられる。日本の高度な鉄道技術をパッケージで輸出する方策。

■経済のサイバー化‐ジャストインタイム‐の衝撃
・大減税で景気回復を果たしたレーガン革命以降の20年間でもっとも大きく変わったのは通信と運輸である。具体的に言えば、通信とITにつながり、宅急便というシステムが一般化する。フェデックス、DHLUPS、ヤマト運輸、佐川急便などを使えば、最速24時間以内に先進国のほぼどこでも荷物を届けることができるようになった。
・このような通信・運輸・金融の変化によって供給者と消費者がジャストインタイムで直接取引ができるようになった。供給者と消費者がジャストインタイムで直接取引することが可能になった。金融の進化は決済方法の多様化を促した。電子マネーやポイントでの支払いが可能になり、その場で現金払いというのは過去の話になった。
アメリカのPCメーカーであるDELLは、注文からわずか48時間で製品を組み立ててしまう。だから配送の時間を考慮しても世界中の顧客が自分の指示通りの製品1週間程度で手にすることができる。スペインのZARAは全世界に4780の店舗を持ちどの店舗にも発注から48時間以内に商品が届くシステムを作り上げた。ZARAはこのシステムを製造面ではトヨタ、物流面ではフェデックスから学んだという。ジャストインタイム方式だと、注文を受けてからの生産を開始すればいいので在庫を持たなくてもよくなる。金利が安いから在庫を多めにもとうという発想はないので在庫をもたなくても良くなる。

IT革命でイノベーションが起こったのは通信、運輸、金融とのことですが確かに同感です。ZARAについては初めて知った。おもしろかった。

■いざという時は相続税免除
・日本のほんとうの金持ちは給与所得者であり、資産化である。個人の固定資産と金融資産の総計は3500兆円とも言われておりここに毎年1%程度の税金をかければ35兆円の税収となる。
・先進国ではイタリアやオーストラリアなどの17カ国が相続税の免除を行っている。理由は高齢者に貯まりやすい資産を若い世代に譲渡して経済を活性化するという知恵である。資産課税をしっかり取れば、相続や贈与は税収中立である。つまり、資産をもらい受けた人が同じ額の税金を払い続けることになる。

相続税って減らしたらまずいんじゃないの?って思ってたけど逆なんだな。どっちにしろ資産課税をかけてんだから、相続税とか贈与税でわざわざ関所をもうけて取る必要ってあんまないのかも。これで若い世代にお金が一杯移って消費がさかんになるそうだ。

カリスマブロガーの書評をどうぞ。

【まとめ&感想】
久しぶりに大前さんの良著に出会えた感覚があった。知的好奇心でどんどんページが進んだ。大前さんの発想力・思考力・情報収集力はすごい。そんな考え方があんのかい!といつも感心させられる。さすが世界規模のコンサルタントですね。これからの投資すべき新興国をあげならがの解説はおもしろかった。一番驚いのはJALJR東日本への売却案と相続税免除である。日本で生活してると分からないけどJRのやっているビジネスモデルって世界に売り出せるほどのすごいスキームなんだなあ。
また、相続税免除のほうが若い世代に一気に金が動くんだとか。結局相続された人、贈与された人が資産課税をしっかり払うんだから問題ないってこと。確かに2重取りする必要はないよね。オーストラリアとかイタリアはすでに相続税免除を実施してるんだからおもしろい。相続税100%案とかもあって議論が23点しているなかで説得力のある内容だった。最後に、個々の企業のビジネスモデルの解説は面白かった。DELLやアパレルメーカーのZARA。ユニリーバや矢崎総業やダイキン工業・ヤマハ発動機など不況でもグローバルな市場で恐るべき実績を残す企業は多いんだね。


最後に大前さんの前著を喰らえ。こっちは進化前って感じ。
マネー力 (PHPビジネス新書)

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