2010年11月29日月曜日

「稲盛和夫の実学」を読んで

稲盛和夫の実学―経営と会計
稲盛和夫の実学―経営と会計

もともと小宮一慶さんの本をいろいろ読んでいたら、どうやら小宮さんは京セラの創業者の稲盛和夫さんの書籍にかなり影響を受けていることが分かった。そこで、アマゾンの中古で取り寄せてさっそく読んでみた。キャッシュフロー経営の本だとのうわさを聞いて、読んでみたが現場ベースに基づいたとても分かりやすい良い本だった。印象に残った部分は以下の通り。


■利益はどうなったのか?齋藤経理部長とのやりとり
・稲盛氏が工学部出身で会計の右も左もわからなかったころに、経理部長だった斉藤部長に「いったいこの資金繰りはどうなってるんじゃー!」とひとつひとつ質問攻めにして会計の本質を理解していったシーンが印象的。わからないことはわからないとはっきり主張してひとつひとつ理解していく姿勢はとてもすばらしいと感じた。

理系出身だった稲盛氏の独自の視点があったのかもしれない。かなり早い段階からキャッシュフロー経営の大切さを確信していた話がとても印象的。

■米国における監査の経験
・米国のシリコンバレーにおいてなんとしてでもセラミックを売りたいとの思いから、米国で事業展開した時の話。米国の担当の植村さんという公認会計士を紹介して頂いたその方から、こんな話をされたらしい。
・「監査をしている会計士に『このくらいはまけてくれよ、これぐらいいいではないか、堅こうな』というようなことを言う経営者がいる。経営者はフェアでなければならない。正しいことを正しくやれる経営者でなければ、監査をお引き受けできない。」」と厳しく突き放されたという話。創業間もないベンチャー企業において理科系出身の新入社員と稲盛氏2名で経理をやりくりしている姿を見てとにかく不安に思ったのだそうだ。


公認会計士と企業経営者の力関係やバランス感覚はとにかく大切なんだとうい話も良くわかる。依頼する経営者は、会計士をいいくるめてやろうという気持ちは絶対に持ってはいけないし、仕事をもらう側の会計士はどうしても力が弱くなりやすいから、正義感と強い意志が必要になる。この話を読んだ時、ライブドア監査人の告白の著者で知られる田中慎一氏を思い出した。会計士は人一倍の志が必要なのだろう。


■稲盛氏が松下幸之助氏の講演
・松下氏が「ダムをつくることで一位の水量で水が流れているように、ダムの蓄えを持って業を行わなければならない。」と述べると、聴衆のなかの一人が、「どうしたらそのような経営ができるのか」を質問した。松下氏は、「その答えは自分も知りません。そのような余裕のある経営をせな、あきまへんな。」と返した。
・聴衆がどっと笑うなかで、稲盛氏はこの言葉に深く感銘したという。こうして京セラの無借金経はスタートしたのだ。


同じ言葉でもそこから「ひらめく」ことができる人はとにかくすごいのだろう

【まとめ】
あくまで現場ベースを大切にしながら、経営と会計の本質を突き詰めていく姿勢に感銘を受けた。会計の話に限らず、専門家同士の会話ってどうも井の中の蛙になりやすい。本質を見失ってしまう。だから、一歩引いて初心者の気持ちなって、接することが大事なのだ。最後に「人のこころをベースに経営をする」ってあたり前できれいごとのように聞こえるけど、すごく大切なことだと思った。



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