2011年2月6日日曜日

「コーポレートファイナンス」を読んで

コーポレート・ファイナンス入門 (日経文庫)
コーポレート・ファイナンス入門 (日経文庫)

最近はファイナンス本をがんがん読んでいるせいで・・・。日経文庫からの本なので、結構固い本ですが分かりやすくコンパクトにまとまってていい本。DCFの考え方、WACCの考え方、配当政策リアルオプション、コーポレートガバナンス、IRRなど全部結構詳しく説明してある。まじめな本ですがオーソドックな入門書。
印象に残った部分、勉強になった部分は以下の通り。

■なぜコーポレートファインナンスを学ぶか
(1)株主の立場から考える
・株主の企業の資金調達、投資行動、配当政策について考える。新聞や経済史などで株主重視の企業経営という言葉をしばしば目にする。
・株主重視というと、従業員や取引先、顧客を軽視するかのように思えるがそうではない。
(2)経営資源を効率的に利用する企業経営
・取引先、従業員、債権者、政府に対して支払うべきものを支払った後、ようやく株主の順番になる。株主に分配されるのは残余利益。残余利益を増やせる企業は経営資源を効率的に運営しているともいえる。
(3)株主まで満足すればみんな満足
・株主は企業の利害関係者のなかで、収益の配分を受ける立場として最後になる。
株主が満足する利益還元を実現できる企業は、取引先や従業員、債券者に対する支払をきちんと行っている。
(4)株主は企業の経営者を選出する
・取締役会は、企業経営の意思決定機関である。経営陣あるいは経営者にとってもよい。起業経営者になるものは、内部出身者ほとんどであり、内部の事情や取引先に精通する一方で、内部に目が奪われがちであった。
・1990年代以降は、株主重視という視点から企業外部から経営に関与する社外取締役が増えている。

株主重視経営のあり方が語られている。日本的経営からの脱却を試みた1990年以降の本質がわかる。


■銀行借り入れからマーケットでの資金調達
・戦後、わが国の資金調達において中心的な役割を果たし来たのは、銀行からの借り入れである。現在でも、銀行借り入れが主要な資金調達手段であることは、変わりない。しかしながら、企業の資金調達に占める銀行借り入れが低下しつつあるのも事実。
・企業が銀行借り入れから脱却しつつある一因は、銀行を取り巻く環境変化にもあると思われる。
・1980年代後半から1990年代前半にかけて、我が国の銀行は、様々規制(たとえばBIS規制)や不良債権問題に直面し、貸出残高を縮小せざるを得なくなった。そのため、銀行は以前ほど企業の資金ニーズにこたえることができなくなった。そこで、銀行借り入れに依存していた企業は、新たな資金調達のルートを確保する必要が出てきた。
・銀行借り入れに代わる資金調達手段として、株式調達や社債調達などマーケットからの資金調達が注目を浴び始めたのが1980年代以降である。
・いくつかの大手銀行が倒産したことも、企業がマーケットからの資金調達に軸足を移している原因である、取引銀行が倒産すると、銀行のみに頼ってきた企業は資金調達は困難になる、銀行倒産が珍しいことでなくなった

日本の戦後の高度成長と資金調達方法の変遷を知ることができた。1990年代以降って金融ビックバンとかBIS規制とかでめちゃくちゃ銀行も変化を求められた時代だったんだな。。。

■産業発展の視点
・ここ数年、株式市場を通じて最も多くの資金を調達しているのは、ベンチャー企業である。ベンチャー企業は、事業がある程度軌道に乗ると、マーケットを通じて資金を調達し、事業を拡大していく。ベンチャー企業が株式を一般投資家に発行して、資金調達することを新規公開(IPO)という。現在、我が国には、ジャスダック、マザーズ・ヘラクレスなどベンチャー企業の新規公開を支援するマーケットが整備されている。
・株式市場からリスク・マネーを提供する場と言われている。株主には、債権者より大きなリスクを負担する株主はそれに見合ったリターンが期待できなければ、株主は資金を提供しない。

最近勝間さんの本を一気にバーって読んでんだけどすごく「リスク」って言葉をよく使ってる。もともとリスクマネジメントとかの話を徹底的に勉強されてりうようでためになる。本章でも「リスクマネーを供給する」って言葉を出てくるけど意味深い。

■株式の持ち合いと持ち合い解消
・メインバンク・システムと並ぶわが国の企業システムの特徴として、株式持ち合いが挙げられる。企業間で株式を持ち合い、お互いをモニターとし合うことで、より良い企業経営を実現しようとするシステムのことである。
・一方、株式持ち合いには、短所もある。株式持ち合い強固な企業グループを形成するため、グループ内で付き合いを意識して、企業経営に姿勢が内向きになりかねない。グループ企業が株式の多数を保有するため、株主総会で経営者の責任を問うことは難しくなる。コーポレートガバナンスは機能せず、グループ内でもたれ合いが起こる。企業経営は緊張感をなく、収益性が落ち込む可能性もある。
・近年、株式持ち合いの短所が表面化している。企業は、株式持ち合い解消を進めている。持ち合い解消によって売却された株式を買っている投資主体の一つは外国人投資家である。国内の機関投資家と同様に、外国人投資家も我が国企業の潜在的な技術力を認めているのである、企業の株主となり、企業経営に介入することで、将来より高い利益還元が実現できると考えている。
・外国人投資家の株式保有比率の上昇や企業活動のグローバル化が進んだ現在、我が国の企業経営に外国人が加わることも珍しくない。彼らは、コーポレートファイナンスの知識を持ち、株主重視の企業経営を知っている。

日本企業の悪い点のひとつの株式の持ち合いだと良く言われる。あとグループ化で徹底して大きくなろうとする傾向があるんだろう。右を向いても左を向いても同じような企業ばっかりなのも大きいのかも知れんね。韓国なんてメーカーはサムスン一本で勝負ってかんじだからなあ。インテルとかデルみたいにある部分に徹底的に特化したビジネスモデルが大切なんだな。

■従業員の視点
・資金調達でもコーポレートファイナンスでも、マーケットの役割が大きくなっている。
・従業員の持ち株制度やストックオプション制度を考えると、経営者や従業員は企業の株主でもある。従業員持ち株制度により毎月コツコツ購入した自社株は、大切な財産である。株価があがると資産価値も上がる。
・ストックオプションは、株価が上昇することで、多額の報酬を得ている企業の経営者もいる。一部の大手企業は、株価や企業価値が上昇するとボーナスを増やす企業体系を導入している。株価は多数の投資家が参加するマーケットの評価であり、どのような評価を受けているかは気になるものである。株価の大幅な下落は、マーケットにおける自社の評価は高く安定する。会社の看板を背負うご自身のビジネスも強気に展開できる。

ベンチャー企業なんかではストックオプションはめちゃくちゃ従業員にとっては重要である。


■借金すると株価は上がる?
・アメリカの株式市場では、企業が負債比率を高めると、株価が上昇する事例が報告されている。借金した企業の株価が上がる?日本では負債では負債に対するイメージが良くないので、不思議に思われることが多い。
・この現象にはいくつかの説明が可能である。ひとつは、最適資本構成の理論。現状の負債比率が、最適資本構成のポイントが低いときに負債比率を高めると企業価値が増加し、株価が上昇する。
・金融機関への信用である。金融機関は、融資を行うにあたり、企業の資産内容を収益性を精査する。その金融機関が資金を融資したのだから、企業の状態は良いはずである。市場はこのことを評価し株価が上昇する。
・企業が負債比率を高めるのは、デフォルトしない強い自信の表れである。この場合、企業は資本構成の調整を通じて、市場にシグナルを発信しているといえる。

この仕組みは「ざっくり分かるファイナンス」や「企業ファイナンス実証中継」などの本ブログでも紹介した。負債は少なすぎても多すぎてもだめ。直接金融と間接金融のバランス良いファイナンスが大切なんだ。負債を増やせるのはデフォルトしない自信のあらわれって解釈も確かだな。ソフトバンクとかたしかにそうだよね。ボーダフォン買収したときの有利子負債はすごかった。

■税金と機関投資家の影響
・税金を考慮すると、株主が受け取るのは、税引き後の配当であり、税引き後の受け取りも異なる。株主は、税引き後の手取り額が大きい配当政策を好む。
・マイクロソフトが、現金配当に踏み切った背景には、配当減税という税制の変更もあったようである。税金が配当政策に与える影響は自社株買いのセクションでも解説する。
・企業の配当政策は機関投資家の株式保有基準にも影響される。年金基金や投資信託などの機関投資家は、無配企業の株式い保有を敬遠する傾向がある。無配株は保有しないというルールをもつ機関投資家がいる。
・機関投資家は、優れた企業分析能力を持っている。機関投資家に保有される株式は、市場の評価も高くなる。機関投資家に敬遠されることを嫌う企業は資金を内部留保せず、配当することを選択する。
・たとえば、半導体最王手のインテルは、売上成長率が年率25%という成長企業であった。同社が配当支払いを始めたい理由は、無配株は保有しないというルールを持つ機関投資家が多かったからだとされている。

配当額と機関投資家との付き合いはたしかにバランスが感覚が必要なんだな。ベンチャー企業がこぞって配当を増やそうと頑張るらしいけど、しっかり内部留保を高めて企業価値の上昇を伸ばすことが最優先だったりもする。配当があればいい会社ってわけでもないから要注意。

【まとめ&感想】
日経文庫は堅い・まじめ。だけどすごく体系化されていてミニ教科書のようで勉強になった。他にもいろいろあるから読んでみたい。「企業財務って万国共通でどこでも通じるものでなければならない、でもリテールファイナンスは国ごとにまるで違う。そこが大きな違い」ってマネックス証券の松本さんが言ってた。その意味でコーポレートファイナンスを体系的に学べるいい本だった。まだまだ初歩なのでさらに一歩踏み込んで勉強したい!

巻末にに載ってた読んで見たい本たちはこちら。結構重い本も多そうだけど。
新版 ファイナンシャル・マネジメント ― 企業財務の理論と実践
基礎からのコーポレート・ファイナンス
現代の財務管理 (有斐閣アルマ)
キャッシュフロー経営入門 (日経文庫)

2011年2月1日火曜日

「日本経済のウソ」を読んで

日本経済のウソ (ちくま新書)
日本経済のウソ (ちくま新書)

経済学に関してはド素人の私ですが、真面目にこの本を読んでみました。もちろんすべて理解できていないですけど...。日本銀行の量的緩和政策を促す高橋洋一氏の近著。

高橋さんは統計的にすごくロジカルに分析・解説してくれるのですばらしくわかりやすい。こういう人の本を読むとやっぱ日本の官僚は優秀だと感じてしまう。どうやらプリンストン大学時代のバーナンキに薫陶を受けたことがかなり大きく影響しているようである。

 「経済学や社会科学では事業の効果を明確に計測する手法がない」と書かれていたけど確かにそうかもしれないね。自分が大学院でやってる研究も社会科学に近いもんがあるけど、結局統計学で立証する以外に方法論がない。でも、結果論でも多くが正しければ正しい可能性は高いんだろう。

参考になった部分。印象に残った部分の要約・抜粋及び感想。
■日本経済の定説を疑うべし
・本書では日銀の量的緩和政策が不十分だったことを最近の出来事を中心の分析している。日銀は量的緩和について「金融システムの安定化」としてそのマクロ経済効果はないと言ってきた。逆に言うと、金融政策は経済停滞の原因とはならない。
・経済学や社会科学は、効果を定量的に計測する手法があんまりない。リーマンショックは量的緩和政策の効果を実証するのに良い実験例となった。
・スイスの国立銀行は、世界最初の中央銀行であり、1931年には世界ではじめてインフレ目標を設定し、大不況を抜け出し他国として有名。ノーベル経済学賞の創立国でもあり、国民は経済学を信頼している。

ノーベル経済学賞がすべてなのかと言われたら確かにあれだけど,世界的な権威だから
量的緩和をすすめるクルーグマンもノーベル賞受賞。日本ってやっぱガラパゴスなのか?

■日銀はデフレの確信犯
・日銀は日本をデフレにしている確信犯。日銀は消費者物価を0から2%にする様な金融政策を運営しているというが、消費者物価が0 ~-1%になるように運営してきた。
・こんなことになってしまったのは日銀法が問題である。先進国では中央銀行は手段の独立性を保っているが、目的は独立していない。日銀法では目標まで日銀が決めてよくその結果デフレ経済になっても日銀の責任ではない。これほど巨大な権力をもった中央銀行は世界にはない。

日銀って確かに頭脳明晰のエリート中のエリートなんだから,バーナンキやクルーグマンの言っていいることも必ず理解しているはずだ。なんで、こうなるんだろう。組織の罠なのかね?

■ニューケイジアンモデルの誕生
・実際はというと、人々はそれほど合理的に将来を考えているのではなく、まったく将来を考えていないとも言えない曖昧なものだからだ。このような問題を解決することが、マクロ経済学の1980年代以降の課題であった。
・そこで生み出されたのが、現在のマクロ経済学で標準なフレームワークとなっているものである。この分析は、2004年にノーベル経済学賞を与えられたフィン・紀ドランドとエドワードプレスコットによる実物的景気循環理論をベースにさまざまなミクロ理論を取り込んだシンプルな構造だった。この実物的景気循環理論に、独占や寡占を含む不完全競争や財の種類によって異なる価格の硬直性、賃金の硬直性などを組み込むと現在主流となっているニューケイジアンモデルになる。
・動学的一般均衡分析は、現時点でまだ発展途上であり、現実の政策決定に使うのは時期尚早という意見が多いモデルである。単純なモデルであるため、一部の政策機関では研究的に施行され、試行されているが、現実世界のデータを十分にフォローできず、政策担当の信頼を十分に得ていないのが実情である。

経済学の素人であるためこの辺はあいまい。でもマクロ経済学上の論争が激しく行われてきたのは分かる。前提条件でいかようにも変わるというルーカスの批判によって,学会はめまぐるしい発展を遂げた。

■日本経済は破たんしない
・破たんとは何か?まず言葉の定義を明確にしなければならない。日本が破綻するという人は「国に破綻とは国債の暴落」というケースが多い。
・典型的な10年間の国債について、現在の金利は1.4%程度であるが、もし5%になれば国債価格は25%以上も低下する。あるいは金利が10%になれば、国債価格は50%以上も低下する。しかし、暴落とはどのくらいの期間で国債価格が何%低下するということなのか?これは定義しない限り議論をしても意味がない。
・ギリシャは財政危機に関して公務員給与カットなど税制支出削減、増税というギリシャ独自の緊縮財政を発表しているがヨーロッパのなかでも指折りの公務員天国であり、その実効性が疑われている。おまけに、ギリシャは雇用者の24%は公務員であり、その所得は全体の23%である。政府所有企業の価値はGDP比18%となんとも高い。公的セクターの多い日本でも政府所有の企業がGDP比10%であるからすごい。
・インフレ目標になると金利が上昇するから問題だという人が多いというのが実感。名目成長率と金利は同じような動きになるから問題だという人もいる。これはおかしな話である。
・民間経済がしっかりしていないから、財政最近のための公務員給与カットや民間経済への増税ができるかどうか疑問視されている。

破綻の定義が重要であるとの主張。確かに科学的には,言葉の定義ってすごく重要だ。議論が定まらない。デフレとか破綻とかそういった言葉の定義はとても重要。

■郵政国営化は民業を圧迫する
・金融において、信用が決定的に重要である。国有で政府の後ろ盾があれば、調達コストは国債金利並みになって、最低コストになる。そのままでもし民間並みの経営ができれば、民間金融機関ではまったく対抗できなくほど、強い金融機関になる。これが、国有金融機関に常につきまとう民業圧迫である。
・国有ということは、株主が国民であり、国民は業務を無制限にした倍の運用の失敗のつけを回され、国民負担が増えることを嫌う。そのためあらかじめ、国有の金融機関の業務を制限し、安全かつ確実に運用する。国有の金融機関の場合、武士の商法になって運用失敗する可能性が高い。

量的緩和政策の話がメインだったが郵政の話も盛り込まれていた。高橋さんの主張は鋭い。民営化の本質は、経営が成り立つかどうかであるとの主張。また,官制金融システムの問題点を厳しく追求している。

量的緩和政策やデフレに関する経済ブログを・・・
ケイジアンVSマネタリスト:http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51669368.html
貨幣数量説:http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51669057.html
デフレ対策にフリーランチはない:http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51626688.html
復活だぁっ! 日本の不況と流動性トラップの逆襲:http://cruel.org/krugman/krugback.pdf


【まとめ&感想】
 新書なのにハードカバーの本をガッツリと読んだような充実感が得られた。統計データや実証分析も精緻でさすが東大数学科卒の財務官僚だわと思ってしまった。
 量的緩和政策の話をしていたのに、最後郵政民営化のはなしになった。でもこの章のおかげで、自分も城内実さんが言っていた「自分も郵政は税金投入を受けない独立採算制だ」というのをまるで信じ込んでいたことが明らかになった。官制金融システムのなかに埋もれて税金が実は投入されていたんだな。
あと高橋さんはさすが数学科だけあって、言葉の定義をしっかりしている。破たんとか、デフレとかもともと言葉の定義があいまいなまま議論しているからそもそも身も蓋もないことを強く主張している。たしかにその通り。
 ツイッターで池田信夫さんなんかのつぶやきを見ていると、「量的緩和政策の有効性は実証したいのは分かるけど学会でちゃんと発表して下さい」とか「高橋さんは財務省をやめておかしくなってしまった。非常lに残念だ」というようなコメントをよせており、今後の展開が気になるところである。
 リフレ派の議論は若手の経済学者を中心に盛り上がりつつあるようで、今後の展開が気になる。もちろん、池田さんも著名でアグレッシブな経済学者であることは事実である。

こちらも必見。興味があるのでこちらも読もうと思います。
バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる

2011年1月25日火曜日

「お金の流れが変わった」を読んで

お金の流れが変わった! (PHP新書)
お金の流れが変わった! (PHP新書)

大前研一さんの本。大前さんを知ったのは高校の時だった。理系出身の経営コンサルタントってことで「平成維新」とか「企業参謀」とかを立ち読みしたことがある。それが初めての出会いだろうか。大前さんは世界的に有名なコンサルタントだそうで、企業参謀とかは英訳されて全世界に読まれいたりしているらしい。一番すごいと思うのが発想力。そんなアイディアがあったのか?と思わずうなってしまう切り口やおもしろい提案が湧いてくる。おもしろかった。さすが大前さん!でも大前さんには「コンサルタントとしては超一流、経営者としてはニ流」なんていう人もいて評価は分かれたりもする。あくまですべてをうのみにするのではなく客観的な視点で読むことは大切だろう。

印象に残った部分は以下の通り。要約・抜粋と感想。

■ホームレスマネーで呼びこんだ
・今のアメリカのようなやり方で成功した国はほとんどない。フランスやイタリア、イギリスなども自民の民間企業を国営化してきたが、大半が失敗に終わった。
・FRBのベンバーナンキやガイドナー財務長官も「アメリカ経済は底を打った」、「新要回復の兆しが見られる」などと発言したのもやはりホームレスマネーをアメリカに呼び戻すためのフェイントだったと言える。

政治家の発言は経済を動かすというけど確かにバーナンキとかガイドナーは恣意的にやってるんだね。日本の閣僚や日銀にその力はない。

■日本の鉄道は世界売れる
・日本人は気づいていないかもしれないがJR東日本のビジネスモデルは海外で売れる。現時点で日本最強の会社だと考えるのがJR東日本。駅ビル型ショッピングセンターのルミネやアトレや電子マネーのスイカを連動させ、乗客をスイカ一枚で食事やショッピングさらにはバスやタクシーまで利用できるというシステムを作り上げた。
・駅中から駅上まですべてが収益に結びつくという日本独自のビジネスモデルは「鉄道は儲からない」の世界常識を覆した。こうなるともはや鉄道事業というよりも、鉄道を含めた地域生活・コミニティ総合サービスである。
・日本の私鉄にも活目すべき点が多い。我が国の鉄道業界は最高の新興国モデルなのである。私鉄というのはディベロッパーであると同時に都市にスラムをつくらない、という優れた役割を持つ。世界中の大都市は押しなべてスラム化の悩みを抱えているがこれは膨大な人口が都心の狭い地域に集中してしまうこと。しかし、日本では郊外から乗り入れる私鉄が半径50キロメートルに分散させてくれた。
・この私鉄モデルはメキシコなど2000万人もの人間が狭い地域にひしめいているところはもちろん、都市部に数百万人の人口を抱える国ならどこでも興味を示すはずである。


日本に住んでると気づかないけどJRがやってるような一体型のサービスって世界では結構めずらしいのかもしれない。スイカで決済サービスを全統合できるところもすごい。JRみたいにもともと図体がでかくて国営で利権を抑えていたからできたのかもしれない。あと、日本って確かにスラム街ってないよね。私鉄のおかげなのかも。

■ワンセットで進出せよ
・鉄道モデルの輸出を考えるときに重要なのは各社レベルではなくワンセットで進出する。日本の鉄道のネックは技術が会社ごとに異なる点。運航技術はJR系、建設は鉄道運輸機構、車両は川崎製鉄、日立製鉄所といった具合に、別々の会社が独自に技術を開発し手掛けている。そのため海外に売り出すときも各社が別々に交渉に出向いてしまうため、パッケージとしての醍醐味は失われてしまう。
・ドイツのフランスにせよ、進出するならワンセットが常識である。今後は高速鉄道で急速に実力と実績をあげている中国が官民一体で世界市場に出てくるはずである。
そうなったら日本も鉄道輸出コンソーシアムのような組織をつくり、車両やオペレーション、ファイナンスまでを含むすべてを一手に引き受ける体制を構築しないと勝てない。
・Eコマースを行うためには、携帯会社に協力を仰ぐなどあらゆる企業がその体制に協力する仕組みを整える。携帯一つで鉄道だけじゃなく駅ビルでどこでも買い物ができる。

鉄道を輸出するための戦略、手立てが綴られている。大前さんの発想力が感じられる。日本の高度な鉄道技術をパッケージで輸出する方策。

■経済のサイバー化‐ジャストインタイム‐の衝撃
・大減税で景気回復を果たしたレーガン革命以降の20年間でもっとも大きく変わったのは通信と運輸である。具体的に言えば、通信とITにつながり、宅急便というシステムが一般化する。フェデックス、DHL、UPS、ヤマト運輸、佐川急便などを使えば、最速24時間以内に先進国のほぼどこでも荷物を届けることができるようになった。
・このような通信・運輸・金融の変化によって供給者と消費者がジャストインタイムで直接取引ができるようになった。供給者と消費者がジャストインタイムで直接取引することが可能になった。金融の進化は決済方法の多様化を促した。電子マネーやポイントでの支払いが可能になり、その場で現金払いというのは過去の話になった。
・アメリカのPCメーカーであるDELLは、注文からわずか48時間で製品を組み立ててしまう。だから配送の時間を考慮しても世界中の顧客が自分の指示通りの製品1週間程度で手にすることができる。スペインのZARAは全世界に4780の店舗を持ちどの店舗にも発注から48時間以内に商品が届くシステムを作り上げた。ZARAはこのシステムを製造面ではトヨタ、物流面ではフェデックスから学んだという。ジャストインタイム方式だと、注文を受けてからの生産を開始すればいいので在庫を持たなくてもよくなる。金利が安いから在庫を多めにもとうという発想はないので在庫をもたなくても良くなる。

IT革命でイノベーションが起こったのは通信、運輸、金融とのことですが確かに同感です。ZARAについては初めて知った。おもしろかった。

■いざという時は相続税免除
・日本のほんとうの金持ちは給与所得者であり、資産化である。個人の固定資産と金融資産の総計は3500兆円とも言われておりここに毎年1%程度の税金をかければ35兆円の税収となる。
・先進国ではイタリアやオーストラリアなどの17カ国が相続税の免除を行っている。理由は高齢者に貯まりやすい資産を若い世代に譲渡して経済を活性化するという知恵である。資産課税をしっかり取れば、相続や贈与は税収中立である。つまり、資産をもらい受けた人が同じ額の税金を払い続けることになる。

相続税って減らしたらまずいんじゃないの?って思ってたけど逆なんだな。どっちにしろ資産課税をかけてんだから、相続税とか贈与税でわざわざ関所をもうけて取る必要ってあんまないのかも。これで若い世代にお金が一杯移って消費がさかんになるそうだ。

カリスマブロガーの書評をどうぞ。

【まとめ&感想】
久しぶりに大前さんの良著に出会えた感覚があった。知的好奇心でどんどんページが進んだ。大前さんの発想力・思考力・情報収集力はすごい。そんな考え方があんのかい!といつも感心させられる。さすが世界規模のコンサルタントですね。これからの投資すべき新興国をあげならがの解説はおもしろかった。一番驚いのはJALのJR東日本への売却案と相続税免除である。日本で生活してると分からないけどJRのやっているビジネスモデルって世界に売り出せるほどのすごいスキームなんだなあ。
また、相続税免除のほうが若い世代に一気に金が動くんだとか。結局相続された人、贈与された人が資産課税をしっかり払うんだから問題ないってこと。確かに2重取りする必要はないよね。オーストラリアとかイタリアはすでに相続税免除を実施してるんだからおもしろい。相続税100%案とかもあって議論が2点3点しているなかで説得力のある内容だった。最後に、個々の企業のビジネスモデルの解説は面白かった。DELLやアパレルメーカーのZARA。ユニリーバや矢崎総業やダイキン工業・ヤマハ発動機など不況でもグローバルな市場で恐るべき実績を残す企業は多いんだね。


最後に大前さんの前著を喰らえ。こっちは進化前って感じ。
マネー力 (PHPビジネス新書)